減損はいつ、どの物差しで判定するか

二要件がそろって初めて切り下げる

オーディットコア・ハブのアキラです。この記事では、有価証券の減損に進むのはどんなときなのか、そして判定にどの物差しを当てるのかを見ていきましょう。

どれだけ下がったか、それだけでは切下げは決まらないんですね。

減損の基準時価は、原則が決算日当日、平均はその他有価証券の継続適用だけ

この一文が、今回の暗記対象なんです。

ひとことで言えば、判定に使う時価は原則として決算日当日のもので、市場価格の平均を用いる方法はその他有価証券について毎期続けて適用するときの扱いだ、ということですね。

切り下げるかどうかは、著しい下落と、値を戻す見込みの根拠が見当たらないこと、この2つがそろってから決めていきましょう。

この記事で分かること

減損はいつ、どの物差しで判定するか(TR-03-h)

4コマ漫画: 減損はいつ、どの物差しで判定するか

よくある誤解

単独で提示されたら誤りになる記述を、先に並べておきます。

1つ目の記述は、要件がひとつ足りないものです。2つ目の記述は、使える場面の広げすぎですね。

3つ目の記述は物差しのすり替え、4つ目の記述は会計と税務の同一視なんです。

解説

市場価格のある有価証券のうち売買目的以外のものは、時価が下がっただけでは切り下げません。

では、減損、つまり帳簿に載せた金額を切り下げる処理に進むのは、どんなときでしょうか。切下げに進むのは、2つの条件がそろったときです。

ひとつは、時価が著しく下落していることですね。もうひとつは、値を戻す見込みがあると言える根拠が見当たらないことです。

切り下げた金額は当期の損失に含めます。そして、切下げ後の帳簿価額を、以後の取得原価とみなすんですね。

ここを一段で済ませてしまう記述、たとえば下落率だけを条件にした記述は、条件がひとつ抜けています。

要するに、どれだけ下がったかだけでは足りないということなんです。

判定に使う時価は、原則として決算日当日の時価です。

なお、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均を用いる定めは、時価算定会計基準(企業会計基準第30号)の適用に伴い削除されています(2026年4月1日現在)。

ただし、著しい下落かどうかを検討するときは、その他有価証券について期末前1か月の市場価格の平均を用いることも妨げられず、この方法は毎期継続して適用することが要件です(金融商品会計に関する実務指針)。

整理すると、平均が使えなくなったのは期末の帳簿価額を出す場面で、著しい下落かどうかを見る場面では毎期続けて使うなら平均も使える、という区別なんですね。

なお、市場価格のある株式について四半期決算で計上した減損は、年度決算で洗い替えることが認められる場合があります。

洗い替えとは、いったん戻して年度末の時価で判定し直すことですね。年度決算で切り下げた金額はその後戻さない、という扱いとは区別しておきましょう。

市場価格のない株式は、そもそも当てる時価がないんですね。たとえば、家にある古い家具のように、市場での値段がついていないものを思い浮かべてください。

この場合は発行会社の財政状態を映す実質価額で判定します。1株当たりの実質価額は、発行会社の純資産額を発行済株式総数で割って求めます。

この額が取得原価の半分程度かそれ以下まで下がっているなら、通常は回復の見込みがないものと扱うんです。数値例を1つ置きます。

発行会社の純資産額が6,000万円、発行済株式総数が2,000株なら、1株当たりの実質価額は30,000円です。

取得単価が70,000円だったとすると低下率はおよそ57%で、おおむね50%程度以上という目安を超えます。

100株を保有していれば、取得原価は70,000円×100株=700万円です。

切下げ後の帳簿価額は30,000円×100株=300万円ですから、評価損は差額の400万円になりますね。

判断の軸は、「どれだけ下がったか」と「戻る根拠があるか」を別々に確かめ、両方がそろってから切り下げること、そして当てる物差しを市場価格の有無で選び分けることです。

根拠は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」です。

なお、会計で評価損を計上しても、2026年4月1日現在の法人税法では資産の評価損は原則として損金に算入されず、申告で加算します。

つまり、会計の上での評価損と、税金の計算で引ける金額(損金)は別ものだということなんですね。

会計と税務の扱いの差と申告調整は、法人税等の申告の回(TX-03)で扱います。

この論点はこう問われる

試験テクニック

「最も適切でないもの」を選ぶ形式では、読み始める前に問いの極性へ印を付けましょう。

極性とは、正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのかの向きのことですね。あとは各記述に、正・誤だけを淡々とマークしていきます。

この論点では「一律に」「にかかわらず」「無条件に」のように、例外を認めない表現が付いた記述をまず疑うのが安全ですよ。

要件が2つある論点では、条件を消す語がそのまま誤りの目印になるからなんですね。計算を求められたときは、次の三段で固定します。

「純資産額を発行済株式総数で割る」「取得単価と比べて低下率から要否を判定する」「実質価額に保有株数を掛ける」の三段です。

取得原価を単純に半分にしただけの金額や、切り下げずに据え置いた金額は、三段のどこかを飛ばして作られた金額なんです。

覚え方

決算作業では、保有銘柄の期末時価を一覧にして、下落の大きい順に並べます。ところが、並べ替えただけでは切下げは決まりません。

そこで拾った時価がどの日のものかによって、要否の判定まで変わってしまうんです。教訓を一言で。

減損の基準時価は、原則が決算日当日、平均はその他有価証券の継続適用だけ


この記事の1枚まとめ

論点よくある誤解正しい判断の軸キーワード
減損(TR-03-h)下落率が大きければ回復見込みを問わず切り下げる著しい下落と回復見込みなしの二要件。物差しは市場価格の有無で選ぶ決算日当日の時価・実質価額はおおむね50%程度以上の低下・税務は原則加算

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この記事を書いた人

第三者委員会報告書を解説するYouTube『監査レンズ』の運営者が、論点ノート・問題・解説を制作しています。
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