#42 報告で動かし、フォローで見届ける

内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第42回/章「監査の全体像とまとめ」|読了 約4分

後半の、2つのフェーズ

監査は、計画・実施・報告・フォローアップという、4つのフェーズで進みます。計画フェーズでは、リスクで監査対象を選び、目的、範囲、手続きを決める。

実施フェーズでは、推測ではなく事実に基づいて、確かめていく。今回は、後半の2つ、報告とフォローアップを、見ていきます。

見届けて、実効性

3つ目は、報告フェーズです。実施フェーズで見つけた問題点を、観察事項。

こうすべきという助言を、提言と呼びます。この観察事項と提言を、監査報告書に、まとめていきます。

宛先は、執行を担う経営陣と、それを監督する立場ですね。

日本の会社では、機関設計に応じて、取締役会や監査役(会)、監査等委員会、監査委員会などが、監督・監査の役割を担います。

監督する立場にも報告するのには、理由があるんです。もし経営者だけに報告していたら、経営者に都合の悪い指摘は、握りつぶされかねません。

だから、経営者の職務執行を監督する機関にも、必ず報告を届ける。これが、独立性という考え方が、報告の場面で形になったものなんですね。

そして大切なのは、「事実を並べる」ことじゃない。「経営者が、動きたくなる」報告書を書くこと。

いつまでに、誰が、何をすべきか。そこまで具体的に書いてあるから、経営者は動けるんです。

そして4つ目が、フォローアップです。改善措置が、本当に実施されたか。

しかも、それが本当に効いているか。一定期間後に、確かめるフェーズですね。

皆さん、宿題を出して、回収しない先生を、想像してみてください。出しっぱなしでは、子どもがやったかどうか、分かりませんよね。

フォローアップは、いわば「答え合わせ」なんです。

実は、ここが、一番見落とされやすいんです。理由があります。

報告書を出した頃には、監査チームはもう、次の案件に動いている。監査を受ける部門、被監査部門も「対応しました」の一言で、済ませがちです。

だからこそ、改善が本当に進んだかを、記録や書類などの証拠、証跡で確かめる。やり残しがあれば、もう一度フォローする。

ここまでやって、はじめて、監査に実効性が生まれるんですね。

評価し、届ける役

ところが、VW(フォルクスワーゲン)のディーゼル車排ガス不正事件では、ガバナンスにも、深刻な問題があったんです。

VWのガバナンスは、英国の機関投資家ガバナンス専門家から、「比類なくひどい」と、厳しく評されました。

経営を監督する機関である監督役会の、意見の多様性が、不足していたという指摘ですね。

さらに、CEOの報酬です。報道ベースでは、2014年の報酬総額は約1,600万ユーロ。

うち固定報酬は、約200万ユーロ。約12.5%にとどまり、残りの大半が、業績連動だったと言われています。

この構造が、コンプライアンスより業績を優先する文化を、助長したという論調が目立ちます。

ここで、仮に考えてみましょう。もし内部監査が、技術部門を独立的に検証する。

報告を受けた経営者が、改善を実行する。フォローアップで確認する。

そんな仕組みがあれば、罰金や和解金だけでも数百億ドル規模に上った損失を、小さくできたかもしれません。

もちろん、内部監査があれば不正を必ず止められた、という話ではないんです。

内部監査の役割は、規制対応という仕組みが危ういことを、独立した立場で評価し、経営陣と監督機関に届けること。

その先で改善とフォローアップが回って、はじめて損失を小さくできた可能性があるんですね。

計画とフォローが、鍵

ここで、皆さんの組織に、目を向けてみましょう。たとえば、経費精算のプロセスを、選んだとします。

計画フェーズで見るのは、経費規程と、承認ルール。実施フェーズでは、精算書と領収書を、突き合わせるんですね。

経費規程は、領収書の添付を求めています。ところが、3ヶ月分を見たら、証憑のない経費が、8%あったとします。

大事なのは、8%という数字そのものより、添付ルール違反であることを押さえたうえで、それが単なる事務ミスか、不適切支出を含む重大な問題かを、見極めることなんです。

規程と実態のギャップを評価したものが、報告に値する観察事項なんですね。

内部監査の部署がなくても、経理が他部署の経費精算をチェックする、そんな場面でも、この4フェーズの考え方は、同じように使えます。

ハッキリ言います。監査は、「行って、見て、報告する」だけの仕事じゃ、ないんです。

計画。何を見るかを、決める。

実施。事実に基づいて、検証する。

報告。経営者を動かす文書を、書く。

フォローアップ。改善が実現したか、見届ける。

この4つで、監査は一周するんですね。

覚えておいてほしいのは、ここです。監査の価値を決めるのは、「行って、見る」現場だけじゃ、ないんです。

計画で、方向を定める。フォローアップで、改善を見届ける。

出した宿題の、答え合わせまでやりきる。実施されたか、効いているか、その両方をです。

この「前」と「後」こそが、監査の価値を、決めるんですよ。

次の回へ

伝えたところで、ほっとして終わりにしていませんか。分かれ目は、そのあと見に戻るかどうかなんですね。

では、ここまで積み上げたものが、最後にどうまとまるのか。次の回で、全体を見渡します。

見に戻るまでが仕事だと決めれば、期限のあとに確認の予定を入れられます。

この回の持ち帰り

監査は「行って、見て、報告する」だけじゃない。計画で方向を定め、フォローアップで改善を見届ける。「前」と「後」が、監査の価値を決める

内部監査の「考え方」を、演習で確かめる。

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