#41 監査は、計画から始まる
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第41回/章「監査の全体像とまとめ」|読了 約4分
フォローアップ=改善を見届ける
内部監査人には、独立した立ち位置、客観的な頭、判断の羅針盤、そして学び続ける力という背骨があるんです。
今回は、その内部監査が、現場で実際、どう一周進むのかを、見ていきます。
ここで、ひとつ、疑問が残っていませんか。内部監査って、具体的に何をするのか。
実は、典型的な監査には、明確な手順があるんです。計画して、実施して、報告して、フォローアップする。
この4つのフェーズですね。
最後のフォローアップは、改善がちゃんと行われたかを、見届けることです。
この回では、ある事件を素材に、まずは前半の2つ、計画と実施を、仮想的に追体験してみましょう。
約380億ドル規模
2015年9月。ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンに、激震が走ったんです。
世界では約1,100万台のディーゼル車に、不正ソフトウェアが搭載されていました。ディフィート・デバイス、Defeat Device。
日本語にすれば「無効化装置」なんですね。
この装置はですね、車が排ガス検査を受けているかどうかを、自動で判別していたんです。検査中だけ、浄化装置をフル稼働させる。
通常走行に戻ると、浄化を最小限に切り替える。結果、通常走行時の窒素酸化物(NOx)の排出量は、米国基準の、最大40倍。
皆さん、環境規制を、ソフトウェアでごまかしていたんですよ。
発覚のきっかけは、外部の研究者でした。ウェストバージニア大学のチームが、実走行テストを行ったんです。
すると、検査結果と実走行データに、異常な乖離があった。ここから、不正が表に出ていきました。
裏を返せば、少なくとも、社内の検証の仕組みが、有効に機能していなかった可能性があるんですね。
そして、最高経営責任者(CEO)のヴィンターコルンが、2015年9月に辞任しました。報道ベースで、事件に伴う関連費用の総額は、約380億ドル規模。
日本円にして、約5兆7,000億円規模なんですよ。ここで、皆さん、こう考えてみてください。
もしVWの中に、排ガス規制への対応を独立した立場で点検する内部監査チームがいたら。何が、変わっていたでしょうか。
目的・範囲・手続きを絞り込む
ここから、仮想監査を始めますね。まずは、計画フェーズです。
「段取り八分、仕事二分」という言葉がありますよね。段取りが八分、実際の仕事は二分。
監査も、まさにそうなんです。成否は、現場に行く前に、ほとんど決まっているんですね。
内部監査人は、いきなり現場には行きません。計画は、二段階で進むんです。
最初は、組織全体を見渡して、リスクの高い領域を洗い出す。そのうえで、どこを監査するかの優先順位をつける。
リスクの高さで監査対象を選ぶ、この考え方を、リスクベース・アプローチと呼びます。
排ガス規制への対応は、技術的にも法的にも、リスクが高い領域ですよね。
対象が決まったら、今度は、その領域の中をさらに細かく見て、監査の目的、範囲、手続きを、絞り込んでいくんです。
段取りが、成否を決める
次に、実施フェーズです。ここでやるのは、3つ。
規制対応プロセスとテスト手続書のレビュー。排ガステスト結果の、独自検証。
そして、開発部門をはじめとする関係者への、インタビュー。ポイントは、「推測」ではなく「事実」に基づく、ということです。
こうして集めた事実を、監査の言葉で「監査証拠」と呼びます。
ここで大事なのは、計画と実施が、つながっているということです。テスト結果と実走行データを比べる。
これは、計画フェーズでリスクが高いと見立てた領域から導かれた、検証の論点なんですね。リスクで対象を選んだからこそ、こういう問いが立てられるんです。
もちろん、内部監査は、全知全能ではありません。すべての不正を、見抜けるわけではない。
でも、正しい問いを立てれば、規制対応の仕組みが機能していない兆候に、気づける可能性があるんです。
ここまでで、覚えてほしいのは、ここです。監査は、いきなり現場に行くものじゃ、ないんです。
計画から、始まる。何を見るかを、リスクで選ぶ。
そして、事実で、確かめる。段取り八分。
その段取りが、監査の成否を、決めるんですよ。
次の回へ
何を見るかを決める時間は、地味です。でも、皆さんの調べものの出来は、そこで半分決まります。
では、集めた事実は、どこへ渡せば組織が変わるのか。次の回で、その行き先を追いかけます。
調べる前の段取りが効くと分かれば、頼まれた確認でも、見る範囲を先に書き出せます。
この回の持ち帰り
監査は「計画」から始まる。何を見るかをリスクで選び、事実で確かめる。段取りが、監査の成否を決める
内部監査の「考え方」を、演習で確かめる。
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