#40 学び続ける力が、背骨になる

内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第40回/章「独立性と倫理」|読了 約4分

限界を知り、借りる

内部監査人には、専門能力が求められます。ただ、全てを自分で知る必要はなく、大事なのは、自分の限界を知ることと、外部の力を借りることです。

今回は、専門能力の話の続きを見ていきます。

会計・財務からデータやサイバーまで、求められる能力が広がるなかで、監査の現場は、実際、変化に追いついているのか。そこを、確かめていきましょう。

生成AIと、重点リスク

ここで、ひとつの調査を、見てみます。内部監査の国際的な専門職団体、IIA(内部監査人協会)が毎年出している、内部監査の実態調査。

最新のPulseレポート、2025年版ですね。そこに、こんな数字があるんです。

CAE、つまり内部監査部門のトップですが、その92%が、データ分析を、これから最も重要なスキルだと、答えているんです。

ところが、です。実際にデータ分析を、高度なレベルで活用できていると答えたCAEは、わずか28%でした。

重要だと分かっているのに、現場では、まだ使えていない。では、なぜ、このギャップが埋まらないのか。

データ分析を担える人が、簡単には採れない。育てるにも、時間がかかるんです。

だからこそ、いまいる一人ひとりが、学んで力をつけていくことも重要なんですね。一方で、急速に進んでいる変化も、あります。

生成AIの活用です。内部監査の業務で生成AIを使っているCAEの割合は、前年の15%から、40%へ。

1年で、2倍以上に増えました。

生成AIというのは、文章や画像をつくり出すAIのことですね。技術は、待ってくれません。

IIAとプロティビティの共同調査でも、サイバーセキュリティ、AI、データガバナンスが、内部監査が向き合う、上位のテクノロジーリスクとして、挙げられているんです。

絶やさない、学びの火

新しいリスクに対応するには、新しい知識が、要ります。一度学べば、それで終わり、というわけにはいかないんですね。

そこで大切になるのが、CPDという考え方なんです。

CPDは、継続的専門能力開発、Continuing Professional Developmentの頭文字です。資格を取ったら終わり、ではありません。

とくにCIA、公認内部監査人の資格を維持するには、毎年の継続教育、CPEの実績がなければ、維持できないんです。

しかも、ただ時間を積めばいい、というものでもありません。自分に足りない力を見極めて、そこを狙って、埋めていく。

それが、CPDという考え方なんですね。ここで、誤解しないでほしいんです。

内部監査人が、何でも屋になる必要は、ありません。

データ分析も、サイバーも、AIも、全部を専門家レベルでこなす。そんなことは、求められていないんです。

でも、何が起きているかを、理解する力。これだけは、欠かせません。

外部の専門家と、ちゃんと話が通じる。その土台だけは、自分のなかに、持っておく必要があるんですね。

学びというのは、一度灯して終わり、ではありません。絶やさず燃やし続ける、火のようなものなんです。

皆さん、自分に問いかけてみてください。いまの仕事で、一番「分からない」と感じる領域は、どこですか。

すぐに答えが出なくても、大丈夫です。分からない、と気づけたこと。

それ自体が、成長の起点なんですね。

もう、知っている

ここで、この章の全体を、振り返りましょう。内部監査人の資質を、4つの角度から見てきました。

1つ目は、独立性です。東芝事件で見たように、形が整っていても、経営者に従属していれば、監査は機能しません。

独立性は、組織レベルの概念でした。報告ラインをどこに置くか、という、組織の「構造」で守るものだったんですね。

2つ目は、客観性です。客観性は、独立性と違って、一人ひとりの頭の中の問題でした。

チャレンジャー号で学んだように、専門家でも、自分の中のバイアスに負けます。

だからこそ、個人の心がけに任せず、担当替えや相互チェックという、監査の「進め方」で、補うものでしたね。独立性は組織の構造、客観性は監査の進め方。

守る場所が、違うんです。

3つ目は、倫理。スノーデンとホーゲンの事例で見たように、倫理は、守るべきルールではありませんでした。

板挟みの状況で、何を基準に判断するか。その羅針盤でした。

そして4つ目が、専門能力です。全てを知る必要は、ありません。

でも、何が分からないかは、知っている必要がある。だから、学び続ける。

独立性、客観性、倫理、専門能力。この4つが、内部監査人の、背骨なんです。

どれか1つが欠けても、見張り役としての体は、まっすぐ立っていられない。

そして、この背骨を支え続けるのが、何が分からないかを知り、それを埋めるために学び続ける力なんですね。

この章で、覚えてほしいのは、ここです。まずは、さっき思い浮かべた、一番分からない領域を、一つだけ。

そこから、学び始めてみてください。その一歩が、皆さんの背骨を、太くしていきます。

独立した立ち位置、客観的な頭、判断の羅針盤、そして学び続ける力。この4つは、いきなり全部、身につくものではありません。

でも、この4つを知っているかどうかで、これからの一歩一歩が、変わってきます。皆さんはもう、内部監査人の背骨が何かを、知っているんですね。

次の回へ

分からないことは、伸びしろです。皆さんの伸びしろは、どこですか。

見張る人に何が要るのかという話は、ここでひと区切りです。では、実際の監査は、どんな順番で進むのか。

次の回からは、その流れを追います。全部を知らなくていいとつかめれば、来週の予定に、学ぶ時間を置けます。

この回の持ち帰り

全てを知る必要はない。でも、何が分からないかは知っている必要がある。だから、学び続ける

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