#34 独立性は仕組みで守る
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第34回/章「独立性と倫理」|読了 約4分
独立性は、どう守るか
内部監査人の独立を支えるのは、独立性と、客観性。組織の問題と、人の問題です。
東芝では、利益を水増しする不正会計が起き、監査計画も、監査委員会も、報告書もありました。形は整っていたのに、その不正は7年間も続いてしまった。
形だけの監査は、監査じゃない。
今回は、その守り方を、見ていきます。とくに、組織上の独立性。
内部監査部門が経営者に従属しないために、何が必要なのか。鍵になるのは、報告ラインです。
もう一本の、命綱
報告ラインの話に入る前に、ひとつ言葉を整理します。CAEです。
Chief Audit Executive、内部監査部門の責任者のことですね。このCAEには、報告先が、2つあります。
2つの報告ライン、なんです。順番に見ていきましょう。
ひとつ目が、機能的報告です。これは、取締役会や監査委員会といった、経営を監督する側への、直接の報告ですね。
監査の結果や計画を、経営者を介さずに、そのまま伝えるルート。ここが、独立性の核心になります。
しかも、機能的報告は、報告だけの話ではないんです。
監査の計画や予算を承認するのも、CAE自身の人事評価に意見するのも、本来は、この監督する側なんですね。報告も、計画も、評価も、監督する側が握る。
これが、機能的報告です。
ふたつ目が、事務的報告です。これは、CEOなど、執行のトップへの報告ですね。
予算の編成・執行に関する事務や、日々の業務連絡といった、組織を回すためのルートです。
ただし、これは日常の連絡のためのルートであって、監査の中身を評価したり、承認させたりするルートではありません。
この2つの報告ラインを、併せ持つ。これを、デュアルレポーティングラインと呼びます。
なお、監督する側は、会社によって、監査役会だったり、監査等委員会だったりします。
呼び名だけでなく法的な位置づけも違いますが、経営の執行から離れて監督する、という働きは共通しているんですね。
では、なぜ、報告先が2本も要るのか。命綱を、思い浮かべてください。
崖の上で、命綱が1本だけだったら、その1本が切れたとき、もう落ちるしかありません。
でも、行き先の違うもう一本があれば、経営者へのルートが塞がれても、取締役会へ届く。経営者に不都合な監査結果でも、握りつぶされずに届くんです。
個人では、防げない
ただ、すべての会社に、こんなにきれいな2本のルートが整っているわけではありません。
とくに規模の小さい組織では、内部監査が社長の直属で、監督する側へ届けるルートが弱いことも多いんですね。2本のルートが整っていることが、あるべき姿です。
現実は、到達度に幅がある。だからこそ、この考え方を知っておくこと自体が、最初の一歩になります。
では、独立性が脅かされているサインを、見ていきます。内部監査の担当でなくても大丈夫です。
「もし、自分の会社でこうなっていたら、危ういな」という目で、見てください。ひとつ目。
監査計画の変更を、経営者が指示していないか。監査のテーマは、本来、組織のリスクに基づいて決めるものですよね。
ふたつ目。監査結果の報告を、経営者が修正したり、制限したりしていないか。
「この指摘は、報告書から外してくれ」。そう言われているなら、それは赤信号なんです。
3つ目。CAEの人事評価を、経営者だけが行っていないか。
自分を評価する人が、監査の対象でもある。そんな状態では、耳の痛い指摘は、出しにくくなりますよね。
思い出してください。CAEの人事評価は、本来、機能的報告で、監督する側が握る領域でした。
3つのサインは、どれも、機能的報告で守られるはずの領域なんです。
この3つのサイン、共通しているのは、内部監査が経営者に従属してしまう、という構図です。そして、ここが大事なところ。
どれも、監査人個人の強い意志だけでは、防げません。計画を差し替えられ、報告を削られ、評価を握られる。
一人の頑張りで、はね返せるものではないんですね。
3つの仕組み
だからこそ、制度の出番なんです。2015年6月、日本では、東京証券取引所が、コーポレートガバナンス・コードの適用を始めました。
東芝事件は、日本でガバナンス改革の必要性が強く意識された出来事のひとつ、とも語られています。
コーポレートガバナンス・コードというのは、上場企業に向けた、望ましい企業統治の行動原則です。
たとえば、業務執行から一定の距離を置く、社外取締役を活用すること。経営を、実効的に監督する体制を整えること。
ここまで話してきた、報告ラインや評価の独立。それを、各社の良心まかせにせず、制度として後押しする。
その大きな流れのひとつなんですね。
ハッキリ言います。「うちの監査部門は優秀だから大丈夫」。
これが、いちばん危ない一言なんです。どんなに優秀な人でも、計画を差し替えられ、評価を握られたら、何もできません。
だから独立性は、人の優秀さではなく、仕組みで守るんですね。
CAEの報告ライン。人事評価の独立。
監査計画への不当な介入を、許さないこと。この3つの仕組みで、組織上の独立性を、構造的に守る。
人の善意に頼るのではなく、構造で担保する。ここを、持ち帰ってください。
次の回へ
人の頑張りは、担当が代われば消えてしまいます。皆さんの職場の守りは、人が代わっても残る形でしょうか。
では、仕組みで守れるのは、どこまでなのか。次の回で、その先の守りに踏み込みます。
仕組みで支えると分かれば、点検の予定が誰の一声で変わるかを、見直せます。
この回の持ち帰り
独立性は個人の努力でなく、組織の仕組みで守る
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