#22 リスク対応の5つの選択肢
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第22回/章「リスク」|読了 約4分
リスクには、どう対応するのか
内部監査は、ダメ出しをする仕事ではありません。皆さんの日々の業務を、リスクという言葉で見直し、その妥当性を独立に評価する仕事なんですね。
リスクがあると分かったら、どう対応すればいいのか。
ここからは、その答えを学んでいきます。リスクには、どんな対応の選択肢があるのか。
一緒に見ていきましょう。
受容
突然ですが、明日の天気予報が、雨だとします。皆さんなら、どうしますか。
たとえば、こんな選択がありますよね。在宅勤務に切り替える。
傘を持っていく。誰かに送迎を頼む。
あるいは、濡れてもいい服で出かける。雨の日の、4つの選択です。
実はこの雨の日の4つの選択が、そのままリスク対応の基本になるんです。
今回は、まず4つの基本対応を学び、その上で、機会を取りにいく「活用」まで整理します。
雨の日の選択を、ビジネスに置き換えてみましょう。
1つ目は、回避です。これは、リスクを生む活動そのものを、しないという選択なんですね。
雨なら、外出をやめる。2つ目は、軽減です。
活動は続けるけれど、起きる確率や影響を、小さくする選択ですね。雨なら、傘を持っていく。
ビジネスに置き換えると、こうなります。回避なら、危険が大きすぎる海外市場には、そもそも進出しない。
あるいは、すでに入っているなら、撤退する。軽減なら、サイバー攻撃に備えて、セキュリティに投資する。
リスクをゼロにするのではなく、受け止められる大きさまで下げる、という考え方です。
3つ目は、移転です。リスクの影響を、自社だけで抱え込まない選択なんですね。
ビジネスでの典型例は、保険です。事故が起きる可能性そのものは、残ります。
でも、金銭的な影響の一部を、保険会社に引き受けてもらう。
雨の比喩でいえば、誰かに送迎を頼んで、運んでもらう側に預けるイメージですね。リスクの一部を、他者に引き受けてもらう。
これが移転です。
4つ目は、受容です。コストと効果を考えて、あえて許容する選択ですね。
雨なら、少し濡れてもいい服で出かける。小さなリスクに、いちいち対策を打っていると、対策のコストのほうが大きくなることがありますよね。
だから、わかった上で、受け入れる。これが受容なんです。
戦略と一体で、見る
ここまでが、4つの基本対応です。ところが、実はもう一つ、5つ目の選択肢があるんですね。
それが、活用です。
リスクを避けるのではなく、積極的に取りにいく。不確実性の中にある「機会」を、最大化する判断なんです。
リスクの良い側、つまりアップサイドを、自分から取りにいく対応ですね。回避でも、軽減でも、受容でもない。
機会のほうへ、踏み込んでいく。これが、5つ目の活用です。
これで、リスク対応は5つ、そろいました。回避、軽減、移転、受容、そして活用。
回避、軽減、移転は、リスクの悪い側を抑えたり分担したりする対応。受容は、対応を追加せず、わかった上で引き受ける判断です。
最後の活用だけは、良い側を取りにいく対応なんですね。
ここで、専門的な枠組みを一つ紹介しておきます。
この5つを、世界共通で整理しているのが、COSOという団体が2017年に公表した、ERMフレームワークです。
ERMは、エンタープライズ・リスク・マネジメント。日本語では、企業リスクマネジメントですね。
このCOSOのERMは、会社全体のリスクを、バラバラにではなく、一つの地図の上で見ていく考え方です。
そして、その地図を、会社の戦略や目標と結びつけて考える。それが、COSOのERMの核なんですね。
いまは、リスクへの対応には5つの型がある、と押さえてください。
受容も活用も、経営判断
ここで、もう二つ、覚えてほしい言葉があります。
一つ目は、リスク選好、英語ではRisk Appetiteです。
これは、「うちの会社は、目的の達成に向けて、どこまでのリスクを取ってよいのか」という、組織としての種類と量のことなんですね。
リスク選好は、我慢できる上限であると同時に、どこまで攻めてよいか、という幅でもあります。
新しい市場に挑戦する会社と、安定した既存事業を守る会社では、取ってよいリスクの幅が、違いますよね。車の運転でいえば、どこまでアクセルを踏むのか。
その目安を決めるのが、リスク選好です。
二つ目は、残余リスク、英語ではResidual Riskです。これは、対策を打った後にも、なお残るリスクのことなんですね。
雨の日に傘を持っていっても、靴が少し濡れるかもしれない。セキュリティに投資しても、サイバー攻撃の可能性が、完全に消えるわけではない。
この「まだ残っている部分」が、残余リスクです。
どれだけ手を打っても、リスクはゼロにはならないんですね。だからこそ、その残ったリスクが、受け入れられる範囲かどうかを、会社は判断することになります。
範囲を超えているなら、対応を見直すことも、必要になるんです。
ここが、リスク管理の大事な感覚です。全てのリスクを回避しようとすると、会社は何もできなくなってしまいます。
だから、受容も、活用も、なりゆきでそうなるのではなく、経営が、わかった上で選ぶ。立派な経営判断なんです。
ぜひ覚えておいてください。
次の回へ
守るだけが、リスク対応ではありません。受け入れるのも攻めるのも、選んだと言えるかどうかなんですね。
では、5つの選択肢を知っていれば、正しく選べるのか。次の回では、ある会社の決断から考えます。
明日から、対策を出す前に、これはどの型かと問い直せます。
この回の持ち帰り
リスク対応は5つ。全部回避は不可。受容も活用も経営判断
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