#21 内部監査は、リスクを見直す仕事
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第21回/章「リスク」|読了 約4分
内部監査は、リスクとどう関わるか
リスクとは「悪いこと」ではなく、目的に対する「不確実性」です。
良い方向にも、悪い方向にも、つまりアップサイドにもダウンサイドにも転ぶ可能性の幅、コインの両面のようなものなんですね。
ここからは、その不確実性に、内部監査がどう関わるのかを見ていきます。
一次的に担うのは、経営
指先一滴の血液検査を掲げ、巨額の資金を集めながら、検査が実際には機能していなかったTheranosのような会社では、本来どんなチェックが必要だったのか。
ここで、一つ押さえてほしいことがあります。リスクを管理する責任は、経営にあるんです。
内部監査は、その管理が妥当かどうかを、独立した立場から確かめる。経営判断を代わりに下す仕事では、ないんですね。
そして、もう一つ誤解しないでほしいことがあります。内部監査は、こうした確認をすれば不正をすべて未然に防げる、という仕事では、ありません。
一人で事件を見つけ出す探偵でも、最後のブレーキでもないんです。
内部監査が確かめられるのは、経営や現場のリスク管理が、妥当に働いているかどうか。その健全さを独立した立場から見て、取締役会や経営陣に伝える。
それが、内部監査の役割なんですね。その独立した確認を、これからTheranosを例に、3つの切り口で見ていきます。
内部監査の公式が、3項目と決めているわけでは、ありません。
1つ目。事業の前提を、確かめること。
この技術で、本当に事業を広げてよいのか。経営者を疑うためでは、ありません。
事業の土台が本当に確かなのかを、独立した立場から確かめる。経営が安心して前に進むための、外からの点検なんですね。
これが、戦略リスクを見る視点です。
2つ目。日々の結果を、見続けること。
患者に提供される検査結果の正確さを、品質管理の部門がきちんと監視できているか。異常値や再検査の傾向を追う仕組みが、現場に備わっているか。
ここで、大事なのは、内部監査が自分で検査データを追うのではない、ということです。そうした監視の仕組みが機能しているかを、独立した目で確かめる。
現場を責めるためでもありません。問題に早く気づき、現場が直せるようにするためなんですね。
これが、業務リスクを見る視点です。
3つ目。規制との向き合い方を、確かめること。
規制の抜け穴を使っていないか。説明できない判断を、積み重ねていないか。
現場や経営の規制対応が妥当に働いているかを、外から確かめるんです。これが、コンプライアンスリスクを見る視点ですね。
ただし、Theranosで本来これを一次的に担うべきだったのは、まず経営、品質管理、法務、規制対応です。内部監査は、その妥当性を独立に確かめる立場。
そして、Theranosでは、こうした確認を独立した立場から行う仕組みそのものが、十分に働いていませんでした。
経営者の力が強く、外から検証する目が乏しかったんですね。
その困りごとも、リスク
ここで、覚えておいてほしいことがあります。
内部監査は、夢を壊す仕事では、ないんです。その夢に向かう道に、見落とされた不確実性がないか。
リスクと、きちんと向き合えているか。それを、独立した立場から確かめる仕事なんですね。
経営や現場が進める挑戦を、土台から支える役割です。
皆さんの周りでも、思い出してみてください。新しいプロジェクトが始まるとき、推進する人とは別の、独立した立場の人が、リスクを点検していたでしょうか。
もし、そういう目がどこにも無かったとしたら、それ自体が、一つの危うさのサインなんですね。
そして、皆さん自身の経験にも当てはめてみてください。
経理、営業、購買、人事、情報システム。どの部門にいた人でも、日々の仕事の中で「このままだと危ないかも」と感じた場面が、あるはずです。
営業なら、無理な値引き。購買なら、特定の取引先への依存。
経理なら、月次決算の遅れ。
たとえば取引先への依存は、その1社に何かあれば、明日にも供給が止まるかもしれない、という不確実性です。
そのとき見えていたのは、ただの現場の困りごと、ではないんです。内部監査の視点で見ると、それぞれが、リスクなんですね。
ダメ出しでは、ない
では、この回で一番大事なことを、お伝えします。
内部監査は、まったく知らない世界を見る仕事では、ないんです。皆さんが見てきた業務に、リスクというレンズをあてる仕事なんですね。
レンズを通すと、見慣れた現場の困りごとが、リスクとして見えてくる。
内部監査は、ダメ出しではありません。見てきた業務を、リスクという言葉で見直し、その妥当性を独立に評価する。
それが、内部監査なんですね。経営や現場が進める挑戦を、外から支える仕事なんです。
次の回へ
点数をつけに来る人ではなく、皆さんの毎日を別の角度から確かめる人。内部監査は、そういう役回りです。
リスクがあると分かったとき、何ができるのか。次の回で、その手立てを並べます。
並べ方が頭に入れば、対策を提案するとき、なぜそれを選んだのかまで言えます。
この回の持ち帰り
内部監査はダメ出しでなく、業務をリスクの言葉で見直す独立評価
内部監査の「考え方」を、演習で確かめる。
CIA 学習アプリでは、229論点の問題演習に加えて、論点ノートも読めます。会員登録なしで、まずは10問だけ無料で試せます。
無料10問を試す(登録不要) 論点ノート(冒頭無料)を読む