#19 文化は作り直せる
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第19回/章「ガバナンス」|読了 約4分
壊れた文化は、立て直せるのか
2017年、アメリカの配車サービス、Uberで、組織の文化が崩壊しました。組織の空気が、ハラスメントや、内部通報の握りつぶしを生んでしまったんです。
ルールより強いのは組織の空気で、その空気はトップが作ります。
では、その壊れてしまった文化は、立て直せるのか。今回は、Uberの再生の物語を見ていきます。
新しいトップが来た
立て直しは、まず徹底した調査から始まりました。
2017年6月、前の米国司法長官、エリック・ホルダーが率いる、Covington & Burlingという法律事務所が、調査報告書を提出したんです。
200人を超える人への聴取。300万件にのぼる文書の分析。
そして、47項目もの改善勧告。これが、ホルダー報告書と呼ばれるものですね。
文化の何を変えるべきかを、外部の目で洗い出したんです。
そして、2017年8月。新しい最高経営責任者、CEOが就任します。
ダラ・コスロシャヒ。旅行予約のExpediaという会社で、CEOを務めていた人物ですね。
前任のカラニックは、スキャンダルの連鎖で、辞任に追い込まれていました。トップが代わったところから、文化の作り直しが、本格的に始まっていくんです。
13年目の、初めての黒字
コスロシャヒが最初にやったこと。それが、文化規範の書き換えでした。
ここで、大事なところがあります。トップが一方的に、書き換えなかったんですね。
20を超えるフォーカスグループ。フォーカスグループとは、少人数のグループインタビューのことです。
さらに、1,200件を超える社員からのアイデア。そして、22,000票を超える社員投票。
選ばれた新しい規範の筆頭が、「Do the right thing. Period.」。正しいことをする。
以上、ですね。14項目から、8項目へ。
短く、削ぎ落とされた言葉になったんですね。
それだけでは、ありませんでした。経営陣そのものが、入れ替わったんです。
カラニックが退任したとき、16名の幹部がいました。そのうち、残ったのは7名だけ。
つまり、9人が会社を去ったんですね。
ここが、肝心なところです。文化を変えるとは、言葉を変えることだけでは、ないんです。
誰を残し、誰を引き上げるのか。人事と評価まで連動させて、初めて変わるんですね。
では、結果はどうなったのか。
文化の立て直しと並行して、Uberは、事業そのものも立て直していきました。そして、2023年の第2四半期。
Uberは、本業のもうけを示す営業利益で、初めて、黒字になったんです。創業から、13年。
ずっと赤字だった会社が、ついに、黒字に、たどり着いたんですね。
ここで、1つの比喩です。文化は、庭のようなものなんですね。
荒れた土を入れ替えるだけでは、植物は育ちません。水をやり、雑草を抜く。
手入れを続けて、初めて育つ。規範の書き換えが、土の入れ替え。
人事と評価の連動が、手入れなんです。
ガバナンスを、3つの層で
内部監査の話に、つなげますね。
もし内部監査が、組織の文化そのものをリスクとして評価していたら。内部通報がきちんと処理されているか、トップの言葉と現場の行動がずれていないか。
そうした文化の危うさを、早い段階で取締役会に届けられたかもしれないんです。
組織の文化を、内部監査の観点から評価する。これは一般に、culture audit、文化監査と呼ばれます。
内部監査人協会、IIAも2024年に、Auditing Cultureという記事で解説しているんですね。
たとえば、こんなところを見ます。内部通報が適切に処理されているか。
懲罰が、役職に関係なく一貫しているか。トップの言葉と、現場の行動が一致しているか。
数字に表れない文化を評価する。ここが、内部監査の貢献なんです。
皆さんの会社では、どうでしょうか。掲げた理念と、現場で起きていること。
その間に、ずれは、ないでしょうか。
ぜひ、覚えておいてほしいことが、あります。
組織の空気は、凶器にもなります。でも、今回見たとおり、その空気は、作り直せるんです。
文化は、トップが言葉と行動で、作り直せる。ただし、自然には変わらない。
庭を思い出してください。土を入れ替え、手入れを続ける。
その両方があって、初めて植物が育つ。文化も、同じなんですね。
この章を、振り返っておきましょう。この章では、組織を統治する仕組みを、3つの層で見てきました。
1つ目は、取締役会を中心としたガバナンス。組織の方向を決め、経営を監督し、責任を説明させる。
権力を、きちんと働かせる仕組みでしたね。2つ目は、3つのライン。
現場・管理部門・内部監査で役割を分担し、組織を守る設計です。そして3つ目が、組織文化。
仕組みを、動かす力でした。
土台があり、設計があり、それを動かす力がある。この3つの層がそろって、初めて組織は、きちんと統治されるんですね。
次の回へ
空気は、放っておいても良くなりません。皆さんなら、何から動きますか。
会社を見張り、律する仕組みの話は、ここでひと区切りです。では、リスクとは何なのか。
次の回からは、そこに入っていきます。リスクの見方が変われば、職場で何に目を向けるかも、つかめてきます。
この回の持ち帰り
文化は、トップが言葉と行動で作り直せる。ただし自然には変わらない
内部監査の「考え方」を、演習で確かめる。
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