#16 内部監査の独立という設計
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第16回/章「ガバナンス」|読了 約3分
内部監査の、独立という設計
組織の守りは、3つのラインでできています。第1ラインが稼ぐ現場、第2ラインがそれを見張る管理部門、そして第3ラインが内部監査ですね。
この3つが連動して、はじめて組織は守られます。
今回は、その第3ライン、内部監査の「独立」が、どう作られているのかを、見ていきます。
一番上には、統治機関
この3つのラインという考え方を、世界の標準として整理したのが、IIA、内部監査人協会です。内部監査の国際的な専門団体ですね。
そのIIAが、2020年の7月に公表したのが、3ラインモデル、Three Lines Modelです。
実は、これ、改訂版なんです。それまでの名前は、3つのディフェンスライン、直訳すれば「防衛線」でした。
ところが、この改訂で、IIAは "defense"、防衛、という言葉を外したんです。
なぜ、防衛という言葉を、外したのか。
防衛、と言うと、どうしても「リスクを抑え込む」「悪いことを防ぐ」という、守りのイメージだけになりますよね。
でも、3つのラインの役割は、それだけじゃないんです。新しいモデルが強調したのは、組織を守ると同時に、組織に価値を生み出す、という考え方です。
守るだけでなく、価値も生む。これが、改訂の核心なんですね。
そして、このモデルには、3つのラインの、さらに上に、もう1つ大事な存在がいます。統治機関、英語で governing body ですね。
取締役会と、その中に置かれる監査委員会など、経営を監督する機関のことです。
統治機関の役割は、3つのライン全体を、上から監督することです。現場も、管理部門も、内部監査も、すべてこの監督のもとにある。
これが、3ラインモデルの構造なんですね。
報告ラインは、2本
ここで皆さん、第3ラインの内部監査に、もう一度、注目してください。
第1ラインも、第2ラインも、最終的には、経営陣の責任のもとにあります。経営の一部として動く立場ですね。
ところが、第3ラインだけは、その経営陣からも、独立しているんです。内部監査は「経営の仕組みが機能しているか」を検証する役割ですよね。
検証される側の経営陣の指示で動いていたら、その検証は信用できなくなるからです。では、その独立性は、どうやって守られているのか。
ここで建物にたとえてみましょう。地震への強さは、住む人の気合いでは決まりません。
耐震という「構造の設計」で決まりますよね。内部監査の独立も、同じです。
鍵になるのが、報告ラインの設計なんですね。
報告ラインは、2本あります。1本目が、機能上の報告ライン。
相手は、統治機関、なかでも監査委員会です。ここで扱うのは、監査の計画や結果の報告だけではありません。
内部監査のトップ、CAE、内部監査部門長を誰にするか。その評価や予算まで、統治機関が握ります。
ここが、独立を守る一番のカギなんです。
そして2本目が、管理上の報告ラインです。相手は、CEO、最高経営責任者などの経営陣です。
内部監査も、組織の一員です。ですから、予算や人事の手続きといった、組織運営上のつながりは、経営陣との間にあります。
ただし皆さん、ここが大事です。内部監査の評価や人事の、最終的な権限は、こちらの経営陣にはないんですね。
この2本立てが、デュアルレポーティングラインです。どちらも、正式な報告ラインなんですね。
独立は、設計で守るもの
ここで、この回で、いちばん覚えてほしいことを、整理します。
内部監査の独立は、本人の気合いや、心がけで守るものでは、ないんです。評価も、人事も、予算も、統治機関の側が握る。
だからこそ、報告ラインを、統治機関へ向けて設計する。内部監査の独立は、設計で守るもの。
皆さん、ここを、持ち帰ってください。
次の回へ
皆さんが安心して耳の痛い話を上げられるかは、性格ではなく置かれ方で決まります。では、会社の守りが、全部そろって止まったらどうなるのか。
次の回では、それが実際に起きた話を、見ていきます。止まり方を知っておけば、職場の守りのどこが薄いかも、見当がつきます。
この回の持ち帰り
内部監査の独立は、設計で守るもの
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