#10 あなたの前職が、武器になる

内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第10回/章「内部監査の仕事とキャリア」|読了 約4分

経験は、どう活きる?

内部監査の入口は、一本道じゃありません。経理、IT、法務、現場、それに企業の決算をチェックする監査法人。

どの経歴からでも、入っていけるんですね。

でも、皆さん、こう思いませんか。入口が多様なのは分かった。

じゃあ、自分の経験は、具体的にどう活きるのか、と。

求められる、4つの力

この回では、その「活かし方」を見ていきます。

そのために、まず知ってほしいことがあるんです。内部監査の仕事では、大きく4つの力が求められます。

聞く力。確かめる力。

書く力。つなぐ力。

この4つです。

今日は、この4つの力を、ひとつずつ見ていきましょう。そして、皆さんの前職が、どの力につながるのかを考えていきます。

1つ目=聞く力

1つ目は、聞く力です。

聞く力というのは、現場の人から、本音や違和感を引き出す力のことなんですね。

監査の現場では、こう言われることがあります。「ルールどおり、やっています」。

でも、本当に大事なのは、その言葉の向こう側です。「実は、ここがやりにくい」。

「正直、形だけになっている」。そういう本音を、引き出していく。

それが、聞く力なんです。

2つ目=確かめる力

2つ目は、確かめる力です。

確かめる力というのは、出てきた数字や仕組みに、「本当ですか?」と問い直す力のことなんですね。

報告された数字を、そのまま受け取らない。仕組みが回っていると言われても、いったん立ち止まる。

本当にそうなのか、自分の目で確かめにいく。

これは、監査という仕事の、まさに芯の部分なんですね。

3つ目=書く力

3つ目は、書く力です。

書く力というのは、見つけた事実を、経営に伝わる言葉にまとめる力のことなんですね。

どれだけ大事な発見をしても、伝わらなければ、組織は動きません。何が問題で、なぜ問題で、どうすればいいのか。

それを、経営者がすぐ分かる言葉に整える。

発見を、行動につなげる力。それが、書く力なんです。

4つ目=つなぐ力

4つ目は、つなぐ力です。

つなぐ力というのは、部門の壁を越えて、改善を実際に動かす力のことなんですね。

監査の指摘は、ひとつの部署だけでは解決しないことが多いんです。営業と、経理と、システム部門。

バラバラの部門に声をかけて、一緒に改善を進めてもらう。

人と人をつないで、改善を前に動かす。それが、つなぐ力なんです。

全部、自分で?

ここで、皆さんが思いそうなことが、ひとつあります。

聞く、確かめる、書く、つなぐ。「この4つ、全部、ひとりで完璧にできないとダメなの?」、と。

皆さんも、少し不安になりませんでしたか。

安心してください。そんなことは、ないんです。

ここから、その理由を、お話しします。

巻き込む力で、補う

内部監査は、ひとりで完結する仕事ではありません。

内部監査は、チームで動く仕事です。4つの力も、チーム全体で持っていればいいんです。

そして、この4つを支える、もうひとつ大切な力があります。自分の限界を知って、足りないところは専門家を巻き込む力です。

ITに詳しい人。法律に強い人。

そういう専門家の力を借りて、補っていく。これも、立派な内部監査の力なんですね。

前職は、引き出し

ここで、皆さんに伝えたいことがあります。

内部監査では、これまでの仕事の経験が、弱みじゃなく「強み」に変わるんです。

人によって、歩んできた仕事は違いますよね。経理をやってきた人。

営業をやってきた人。その経験のひとつひとつが、引き出しになるんです。

前職は、いわば引き出し。中には、その人だけの道具が入っているんですね。

引き出しごとに、武器が違う

では、その引き出しの中身を、具体的に見てみましょう。

経理をやってきた人は、数字の違和感に気づけます。おかしな数字を見たとき、ぱっと引っかかる目があるんですね。

IT出身の人は、システムの穴が見えます。営業をやってきた人は、現場で何が起きているか、肌でわかる。

法務やコンプライアンスの人は、規程の解釈が早い。

引き出しごとに、入っている武器が違うんです。

どの引き出しも、活きる

ここで、ひとつ思い出してください。

内部監査の入口は、多様です。経理、IT、法務、現場、監査法人。

どの入口から来ても、強みになる。

そして、内部監査には守りと攻め、2本の柱があります。基準どおりに機能しているかを確かめる保証と、良くなる方向を示す助言です。

どんな前職の引き出しも、その2本柱のどこかで、ちゃんと活きるんです。

私の前職は、品質管理

ここで少しだけ、私自身の話を、させてください。

私はもともと、製造業の開発・品質管理から、内部監査の世界に移ってきました。

製造の現場では、こんなことを考えていました。仕様どおりに作れる設計になっているか。

試作で出た不具合の原因は、どこにあるのか。プロセスのどこに、抜けや漏れがないか。

毎日、そういう目で、ものづくりを見ていたんですね。

経験は、武器になる

そして、内部監査に移って、気づいたことがあります。

その品質管理の見方が、リスクを見極める仕事に、ほとんどそのまま使えたんです。

この回で覚えてほしいのは、ひとつです。

前職の経験は、弱みじゃなく、武器なんです。皆さんの引き出しも、きっと、組織を強くする力になります。

次の回へ

皆さんが「これは監査に関係ない」と思っている経験ほど、実は職場で効くんですね。ただ、こう思いませんでしたか。

資格は、いらないのか。次の回では、内部監査の世界共通の資格を取り上げます。

位置づけが分かれば、皆さんが次に何を選べばいいかも、見えてきます。

この回の持ち帰り

前職の経験は、弱みじゃなく武器。あなたの引き出しが、組織を強くする

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