#8 独立した立ち位置という強み
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第8回/章「内部監査とは何か」|読了 約5分
守りと攻めの2本柱(保証+助言)
内部監査の仕事は、守りと攻めの、2本柱です。基準どおりに機能しているか確かめる、保証。
アシュアランスですね。組織を良くする方向を示す、助言。
アドバイザリーです。この2本柱で、組織を強くしていく仕事なんですね。
監査人の立ち位置
でも、皆さん。ここで、ひとつ思いませんか。
こんな大切な仕事の結果を、いったい誰に届けるのか、と。
この回では、その「立ち位置」を見ていきます。内部監査が、組織のどこにいて、誰に報告するのか。
ここを、ひとつずつ、見ていきましょう。
経営者だけ、では
まず、皆さんに考えてほしいことがあります。
内部監査が、経営者だけに報告していたら。いったい、何が起きると思いますか?
社長一人にだけ、結果を届ける。一見、それで問題なさそうに見えますよね。
でも、ここが大事なんです。もし、その経営者自身に問題があったら。
監査の結果は、経営者のところで止まってしまうんですね。
握りつぶされた告発
これ、思い出してください。
2001年に破綻した、アメリカの巨大企業エンロン。副社長のワトキンスが、会計の不正に気づいて告発しました。
その告発は、会長のレイに、直接届いていたんです。
でも、どうなりましたか。レイは、会社の顧問弁護士事務所に限られた調査をさせただけで、告発は是正につながりませんでした。
内部監査の例ではありませんが、届け先が経営トップ一人だけ。そのルートには、限界があったんですね。
報告ライン=届け先の道筋
ここで、ひとつ言葉を整理させてください。
監査の結果を、誰に届けるのか。その届け先の道筋のことを、報告ライン、と呼びます。
英語のレポートライン、ですね。仕事の成果を、どこの誰に上げていくか。
その道筋のことなんです。
そして、この報告ラインをどう設計するか。ここで、内部監査が機能するかどうかが、決まってくるんですね。
監督機関にも、届ける
だから、内部監査の報告ラインは、違うんです。
内部監査は、組織の中にいます。でも、経営者「だけ」に仕える仕事ではないんですね。
経営者とは別に、もうひとつ。経営の執行を監督する人たちにも、報告します。
この、経営を監督する人たちのことを、監督機関、と呼びます。
内部監査は、重要な事項を、この監督機関にも届ける。ここが、立ち位置の肝なんです。
会社の形で呼び名が変わる
ただ、この監督機関。ひとつ、知っておいてほしいことがあります。
監督機関の呼び名は、会社の形によって、変わるんですね。
日本の会社の監督の仕組みには、代表的な形が3つあります。監査役会を置く会社。
取締役会の中に、監査等委員会を置く会社。取締役会の中に、監査委員会を置く会社。
役割はどれも同じ
呼び名は、監査役会、監査等委員会、監査委員会。3つとも違います。
制度や権限は違っても、取締役の仕事ぶりを監査する。その役割は、どれにも共通しているんですね。
ここでは、会社の形によって監督機関の呼び名は変わる。そのことだけ、つかんでおいてください。
デュアルレポーティングライン
さて、ここで内部監査の報告ラインを、整理しましょう。
内部監査は、経営陣にも報告する。そして、監督機関にも、直接報告する。
報告のルートが、2本ある、ということなんですね。
この、2本の報告ラインを持つ仕組みを、デュアルレポーティングライン、と呼びます。
二重の、報告ライン
デュアルレポーティングライン。英語のデュアルは、二重、という意味です。
日本語にすると、二重の報告ライン、ですね。
経営陣と監督機関。内部監査は、この2つの届け先を持っている。
これが、内部監査の立ち位置を支える仕組みなんです。
業務執行から、距離を置く
では、なぜ、わざわざ二重にするのか。
ここで大事なのが、独立性と客観性です。内部監査は、業務執行から距離を置く。
報告ラインも、同じ考え方なんです。
経営者一人にだけ報告していたら、その経営者に問題があったとき、声を上げられない。
経営者の問題に、備える
でも、監督機関にも届くルートがあれば、どうでしょう。
経営者自身に問題があっても、その先まで、声が届くんですね。
経営陣から独立した、監督や通報の仕組み。内部監査の二重の報告ラインは、まさにその一部なんです。
頭上を、飛び越える線
この二重の報告ライン。私は、いわば経営の頭上を飛び越える線だと思っています。
経営者を、こっそり迂回するわけじゃ、ない。ふだんは、経営陣にもきちんと報告します。
そして、ふだんから監督機関にも報告し、必要なときには、独立した目で、経営の頭上を越えて、まっすぐ届く。
この独立した立ち位置こそが、内部監査の命なんですね。
会計監査は、財務が中心
そして、立ち位置と並んで、もうひとつ。内部監査には、大きな特徴があります。
それは、見る範囲の広さなんですね。
ここで、会計監査と比べてみましょう。組織の外から来る、外部監査。
年に1回の、定期健診のような監査です。
この会計監査が中心に見るのは、財務諸表。つまり、決算書に大きな誤りがないかどうか。
そこに、焦点を絞っているんです。
でも、内部監査は、財務だけじゃ、ありません。
組織の活動、全体が対象
内部監査が見るのは、組織の活動、その全体です。
たとえば、業務のやり方。仕事の手順に、ムダや弱点がないか。
リスク管理も見ます。組織の危険を、ちゃんとつかめているか。
コンプライアンス、つまり法令やルールを守る仕組み。ITのシステム。
そして、海外の拠点まで。目の届きにくい場所ほど、リスクが潜むんですね。
組織の活動、その全体が、内部監査の対象なんです。
リスクの大きいところから
ただ、内部監査も、万能ではありません。
これだけ広い範囲を、すべて一度には、見られないんですね。
だから、リスクの大きいところから、優先順位をつけて、見ていきます。
この考え方を、リスクベース、と呼びます。免疫が、危ないところから働くのと同じですね。
立ち位置が、独立性を支える
ここまでを、ひとつにまとめましょう。
内部監査は、組織の中にいます。でも、経営にすっぽり飲み込まれた場所には、いないんですね。
経営から独立した立ち位置。そして、経営陣と監督機関、2本のルートで報告する。
どこにいて、誰に届けるのか。この立ち位置が、内部監査の独立性を支えているんです。
独立した立ち位置
この回で覚えてほしいのは、ひとつです。
内部監査は、経営から独立した立ち位置で仕事をする。
報告のルートは、2本。ふだんは、経営陣に報告する。
そして、経営の執行を監督する、監督機関にも、直接報告する。
この2本のルートがあるから、経営者自身に問題があっても、そこで止まるリスクを減らせるんですね。
次の回へ
行き先がひとつしかない組織で、皆さんは本当のことを言えるでしょうか。その一点が、組織の強さを決めるんですね。
では、この仕事は、どんな人が担っているのか。次の回から、内部監査人のキャリアに入っていきます。
入口が見えれば、皆さんの次の一歩も、見えてきます。
この回の持ち帰り
内部監査は経営から独立した立ち位置で、経営陣と監督機関の両方に報告する
内部監査の「考え方」を、演習で確かめる。
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