#5 内部監査への誤解と、その本質
内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第5回/章「内部監査とは何か」|読了 約4分
内部監査の本質
2001年、アメリカの巨大企業エンロンが、破綻しました。背景には、意図的な不正に加えて、それを止められない仕組みの欠陥がありました。
だから、仕組みで守る。それが内部監査の出発点なんですね。
では、その「内部監査」って、いったい何なんでしょうか。この回では、内部監査の本質に入っていきます。
どちらも、違うんです
でも、ここで皆さん、思いませんか?
「内部監査って、要するに粗探しでしょ?」確かに、ミスを見つけて指摘するイメージが強いんですよね。
「要は、検査ですよね?」会計帳簿をひたすら突き合わせる、あの仕事でしょ、と。
私、この声を本当によく聞くんです。でも、どちらも違うんですね。
組織の中の人が、組織自身をチェック
そもそも内部監査というのは何かと言うと、組織の中の人が、その組織自身をチェックする仕組み、なんですね。
外から来た人じゃない。自分たちの会社のことを、自分たちで点検する。
これが、内部監査の正体です。
じゃあ、なぜ「粗探し」「検査」という誤解が生まれるのか。
むかしは検査中心
実は、昔の内部監査は、検査色が強い時代もあったんです。
1990年代までの内部監査の現場では、電卓を叩き、そろばんを弾き、机の上に積まれた伝票の山を、一枚一枚、突き合わせていたんですね。
帳簿が合っているか。不正がないか。
取引がルールどおりか。そういう「検査」に近い仕事だったんです。
検査のイメージが残った
だから、いまでも「内部監査=検査」というイメージが残っているんですね。
皆さんも、先輩や上司から、「監査ってのはな、伝票を一枚ずつ見るんだぞ」と、聞いたことがあるかもしれません。
テレビドラマで、分厚い帳簿を抱えた監査人を見たこと、ありませんか?
あれが、古いイメージなんです。
ところが、内部監査は大きく変わったんです。
IIA — 世界の基準を作る機関
今の内部監査は、リスクを評価する。業務の改善を促す。
組織に価値を付加する。
そういう仕事に進化したんですね。
ここで一度、皆さんに紹介しておきたい組織があります。IIA、内部監査人協会。
アメリカに本部を置く、国際的な団体です。内部監査の世界基準を作っている機関なんですね。
世界170以上の国と地域に会員がいて、各地の内部監査人が、IIAの基準を参照して仕事をしているんです。
価値付加 — 組織を強くする
その中で、特に大切なのが、「組織に、価値を付加する」、という考え方なんです。
「価値を付加する」というと、難しく聞こえますよね。でも、シンプルなんです。
ただ見て指摘するだけじゃない。組織が、より良くなる方向に動かしていく。
そういう働きのことなんですね。
ひとことで言うと、組織を強くする、ということです。
1999年・定義の書き換え
実は、その転換点が、はっきりあるんです。
1999年。IIAが、内部監査の定義そのものを書き換えました。
それまでは、検査の色あいが、強かったんですね。それを、要するに、組織に価値を付加し、業務を改善するための、独立した活動へ。
これ、小さな手直しじゃないんですね。内部監査という仕事のアイデンティティを、大きく見直した、転換点だったんです。
いまでは、この考え方が、世界190以上の国・地域に広がっているんです。粗探しじゃない。
むしろ「組織を強くする」仕事なんです。
前に進める力
皆さん、想像してみてください。古い検査だけの監査だと、「ここ、間違ってますよ」で終わるんです。
でも、今の内部監査は、違うんですね。たとえば、こうです。
「この承認フローだと、利益相反が見過ごされやすい構造になっています」「ここに、もう一段、独立したチェックを入れませんか」そう提案するんです。
エンロンでは、社内からの告発を調べたのが、会社の顧問でもある弁護士事務所でした。利益相反ですね。
その後アメリカは、SOX法という法律で、仕組みの側から不正を防ぐようになりました。仕組みで守る。
セーフティネットですね。
そういう、仕組みの弱点を見つけて、組織を前に進める力になる。これが、今の内部監査の中身なんですね。
探偵じゃなく、力
この回で覚えてほしいのは、ひとつです。
内部監査は、粗探しの探偵じゃない。組織を前に進める仕事なんです。
そして、皆さん。皆さんが配属された内部監査部門は、組織の弱点を見つけて叩く部署じゃないんですね。
組織を、前に進める部署、なんです。
次の回へ
皆さんが職場で何かに気づいたとき、それを責めるために使うのか、良くするために使うのか。では、組織を前に進めるって、具体的に何をすることなのか。
次の回では、人間の体にたとえて、その中身をつかみます。この見方が入れば、皆さんの職場に何が足りていないかも、見えてきます。
この回の持ち帰り
内部監査は粗探しの探偵じゃない。組織を前に進める仕事
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