#1 巨大企業エンロン、突然の消滅

内部監査入門(事件でわかる、内部監査の考え方)|第1回/章「なぜ組織は壊れるのか」|読了 約4分

3ヶ月で消えたら?

想像してみてください。

皆さんがいま勤めている会社が、3ヶ月後に消えていたら。

毎月の給料も、コツコツ積み立ててきた退職金も。明日の出社予定も、来年のキャリアプランも。

その全部が、まとめて消えていたら。

皆さん、どうしますか。

そんなこと、自分の会社に限って起きるわけがない。たぶん、そう思いますよね。

第7位/2万人/634億ドル

ところが、です。この「まさか」が、現実に起きた会社があるんです。

これね、作り話じゃないんですよ。

全米の売上高で、第7位。従業員は、およそ2万人。

資産の総額は、634億ドル。

ものすごい規模ですよね。これだけの巨大企業が、たった数ヶ月で消えました。

2001年、アメリカで本当に起きた話なんです。

エネルギー企業エンロン

舞台は、アメリカのテキサス州ヒューストン。エンロンという会社です。

エンロンは、エネルギー企業でした。電気やガスを、買ったり売ったりする会社ですね。

しかも、ただのエネルギー会社じゃないんです。新しい仕組みでエネルギー市場を引っ張る、最先端の企業として知られていました。

ウォール街の寵児

当時のエンロンは、「ウォール街の寵児」と呼ばれていたんです。

ウォール街というのは、アメリカの金融街、株式市場の中心地ですね。その市場で、いちばん人気を集めていた。

それが、ウォール街の寵児という意味なんです。

今でいうと、グーグルやアップルのような巨大IT企業、いわゆるGAFAみたいな存在だと思ってください。誰もが憧れる、時代の主役。

それが、エンロンだったんですね。

潰れるはずがない

業績は、絶好調。発表される決算は、毎年、過去最高を更新していく。

株価も、それに合わせて、ぐんぐん上がっていきました。

投資家も、社員も、メディアも。みんなが、こう信じていたんです。

「あの会社が、潰れるはずがない」、と。

巨大で、最先端で、人気者。エンロンは、まさにそういう会社だったんですね。

$90.75 → $0.26

ところが、ここで一気に潮目が変わります。

2000年8月、エンロンの株価は、最高値の90ドル75セント。

それがわずか1年余りで、26セントまで暴落するんです。

皆さん、見てください。この絶壁。

90ドルが、26セント。ほぼ、紙切れですよね。

数ヶ月で、消えた

そして2001年12月、エンロンは破綻します。

破綻、というのは、会社が立ち行かなくなることですね。全米第7位の巨大企業が、たった数ヶ月で消えてしまったんです。

これ、当時の米国史上、最大級の企業破綻でした。誰も、こんなことが起きるとは思っていなかった。

なぜ、こんな絶壁が生まれたのか。それを支えていたのは、決算書という紙の上の数字。

決算書というのは、会社の成績表のようなものですね。その数字への信用だったんです。

不透明な企業?

実はその少し前、2001年3月のことです。

アメリカの有名な経済誌、FORTUNEが、こう書いていたんです。エンロンの会計には、透明性が足りないんじゃないか、と。

株価がまだ高値だった、暴落のおよそ7ヶ月前のことです。小さな、でも確かな警告だったんですね。

誰かが、ちゃんと気づいていた、ということなんです。

誰も、本気にしなかった

でも、その警告のあとも、株価は高値のまま。

誰も、その警告を本気にしなかったんです。

「あの巨大企業が、まさか」。「経済誌が、ちょっと心配しているだけだろう」。

そんな空気だったんでしょうね。

警告の声は、確かにあった。でも、その声に耳を傾けた人は、ほとんどいなかったんです。

ある社員の、お金

皆さん、ここで一人だけ、人物を思い浮かべてほしいんです。

2万人の社員のなかに、たとえば、こんな人がいました。

その人は、毎月の給料の一部を、自社の株でコツコツと積み立てていたんです。老後のために、退職金を少しずつ増やそうとしていた。

何十年もかけて貯めてきた、自分のお金なんですね。

3ヶ月で、ゼロ

その口座が、たった3ヶ月で、ほぼゼロになりました。

エンロンの株が紙切れになった瞬間、自社株で積み立てていたその人の老後のお金も、一緒に消えてしまったんです。

何十年もかけて貯めてきた貯金が、たった3ヶ月で。皆さん、その人の気持ちを、想像してみてください。

決算書は、嘘だった

なぜ、こんなことが起きたのか。

答えは、驚くほどシンプルなんです。決算書の数字が、本当の数字じゃなかった。

それだけなんですね。

この回で覚えてほしいのは、ひとつです。

「巨大企業は、コケない」。これ、ただの思い込みなんです。

決算書の数字が本当でないとき、組織は、数ヶ月で消える。

次の回へ

数字が信じられないとき、会社の大きさは、何も守ってくれません。じゃあ、エンロンはどうやって、決算書の数字を操ったのか。

次の回では、その魔法のタネを、一つずつ明かしていきます。タネが分かれば、皆さんが職場で何を見ればいいかも、見えてきます。

この回の持ち帰り

「巨大企業はコケない」は思い込み。決算書の数字が本当でないとき、組織は数ヶ月で消える

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